介護事業お役立ちコラム

税理士・介護福祉経営士の【連載コラム】

新年度に向けた航海(経営)の準備

2021年もはや、2カ月が過ぎようとしています。コロナの影響が大きい中、ついに3月決算を迎える法人が多い時期となりました。今の時期でしたら、1月の収支報告と3月の決算着地見込み、税金(法人税や消費税)の試算が終わっている頃かと思います。介護事業の経営は原則法人格が必要です。個人のように1年分をまとめて結果報告することは、さすがにないだろうと思っていました。

ところが、現実はそうでもないようです。税理士を変えたいというお客様からの依頼があり訪問したのですが、お話を伺ったところ、それまでの税理士は訪問を行わない契約となっており、そのため、毎月の予実(予算と実績)の検討や決算見込みの打ち合わせがなかった上に、「決算が終わった」と報告を受けた際に、消費税の納付額が1,000万円ですと告げて帰ったと言うものでした。キャッシュに余裕がある法人であれば良いですが、通常はそんな急に言われても・・・という話になります。

予算と実績比較、決算見込み

こういった納期限間近に納付額が判明するという話は中間申告を行っていない法人の場合、実は珍しいことではありません。特に消費税は事業が赤字であっても納付は免れませんので、累積された税額は青天の霹靂となる場合があります。しかし、このような経営を続けても良いでしょうか?私は経営とは常に予測を立てながら決断していく必要があると考えています。そこで予算や決算見込がとても大切になります。

御法人では1年間の予算作成、進行期の予算と実績との比較、決算の着地見込みを毎月確認されていますでしょうか。決算の着地見込みとは、損益(黒字・赤字)とキャッシュ(資金)の残高予測を言います。予算通りに経営できたかどうかを偽りのない数字で確認し、このまま予算通りに進んだ場合、どういう状態で推移していくのか予測していくことが重要です。介護報酬は2カ月遅れでの入金になることから、とりわけキャッシュの増減は入念にチェックしておくことが重要です。

また、処遇改善手当を毎月ではなく夏冬の賞与や期末手当として支給している場合には、常にキャッシュ残高には「使ってはいけないお金がある!」と意識しておく必要があります。忘れ止めの方法として、処遇改善引当金勘定で常に明らかにしておく方法か、処遇改善分のお金は預金口座を別口にして管理する方法が望ましいです。もしも使い込んでしまっている場合は、スタッフに支給できなくなり、大変な事態になります。毎月のキャッシュの見通しは損益とともに大切な経営数値です。

予算の組み立て方

令和3年4月から介護報酬が改正され、コロナの影響が依然不透明な中でも経営をしていかなければいけません。船で例えると、羅針盤や海図がない中で嵐の海を進むことは自殺行為だと思います。コロナが嵐だと考えれば、介護事業も羅針盤や海図がなければ非常に不安定な航海となります。そこで、羅針盤や海図に匹敵する予算や着地見込みは必要不可欠な要素ではないでしょうか。

予算は一から考える必要はなく、前年度の実績をまずは今年度の予算として使うことができます。前年度の実績を12カ月で割っても良いですが、できれば季節変動や歴日数の影響が加味されている月次の数字を使ったほうが予算と実績を比較するときにさらにわかりやすい指標になります。また、売上については前年度の実績を使う方法以外に、直近(例えば令和3年1月の実績)の実利用者の一人ひとりのデータを使って、4月から1年間継続的に利用したと見込んで月ごとに落とし込んで売上予算とする方法もあります。私は後者を使って予算組みをしています。季節変動については、計算した売上予算に前年度の毎月の稼働率を乗じます。これにより、はずれにくい売上予算が完成します。もちろん、新たな介護サービスを始める場合や新たな加算を算定する場合、加算の算定を止める場合は調整が必要です。

一方で費用です。介護事業の場合は人件費がかなめです。直近(例えば令和3年1月の実績)のスタッフ全員の実データを使って、4月から1年間継続的に就業したと見込んで月ごとに落とし込んでいきます。人件費以外の経費は前年度の平均を使って良いくらいです。

4月以降は完成した予算を使って、実績と比較しながら、売上未達や経費が多くかかってしまった場合の理由の確認やその後の影響を検討してみましょう。影響が大きければその後の予算を補正する必要もでてきます。また、これまでの実績に決算までの予算やその後1年間の見込み予算を結合させることで決算見込みや1年後の見込みが予測できます。このまま行くと将来は利益が残るのか残らないのか、キャッシュは増えていくのか減っていくのか、どれくらいの税金支払いがあるのか等、予測しながら経営が行えます。蓋を開けるまでわからない経営よりも、蓋の中を予測しながら進める経営のほうがよっぽど経営者を安心させてくれます。そこで初めて、事業拡大やキャッシュの確保のための融資等次のステップにつながる打ち合わせができると思います。

つらい時期ですが上を向いていきましょう

コロナや慢性的な人手不足等、経営者を悩ませる問題は尽きませんが、どこの事業所もどの業界も同じです。異なるのは経営者の気持ちです。ぜひ気持ちを切り替えてこれからも乗り切っていこうと心に刻み、新たな新年度を迎えてみませんか。

著者紹介

藤尾智之(ふじお ともゆき)氏
税理士・介護福祉経営士
1996年、法政大学経済学部卒業
2000年、社会福祉法人に入職後、特別養護老人ホームの事務長として従事する。
2011年に税理士試験に合格し、大手税理士法人を経て藤尾真理子税理士事務所に入所。介護、障害を中心とした社会福祉事業に特化した経営サポートを展開する一方、社会福祉法人の理事や監事、相談役を務める。
著書に「税理士のための介護事業所の会計・税務・経営サポート」(第一法規)がある。
さすがや税理士法人URL: https://fujio-atf.jp/

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