介護事業お役立ちコラム

税理士・介護福祉経営士の【連載コラム】

【Excel参考書式の無料ダウンロードつき】簡易な予算管理方法

関東の介護事業所複数からヒアリングしたところ、利用者やスタッフの新型コロナウィルスワクチンの接種は2回目がそろそろ終わるようです。その一方で国内の感染状況を見てみると第5波が懸念されています。ワクチン接種が進んでいるとはいえ、介護事業所の経営は予断を許さない状況が続いています。

介護サービスのうち、とりわけショートステイやデイサービス等の居宅系サービスの稼働率が思うように上がらないという経営者の声をよく聞きます。最近はワクチン接種を受ける高齢者が副反応を想定して、接種休みをする方が増えていると聞きます。接種休みという稼働率ダウンも重なってショートステイやデイサービスは厳しい状況となっています。しかし、大変だと言っていても仕方がありません。コロナが発生して以来この1年半の間なんとかやってこられたことは称賛すべき事実ですが、これからもその厳しい状況が続く以上、経営者として考え方ややり方を変えて経営していくしか道は開かれません。その考え方の1つとして予算実績管理があります。

支払い先ごとに管理する、簡易な予算管理方法

前々回の記事「新年度に向けた航海(経営)の準備」で予算と実績について取り上げましたが、それをご覧になったある介護事業所の管理者から、「経理レベル(勘定科目)による予算管理は、 自計化 していない事業所だとけっこう難しい。」と意見をいただきました。確かにそのとおりだと思いました。自計化していないと会計事務所からの報告待ちとなってしまい、予算超過したことを後から気付くしかありません。遅くなればなるほど対応が後手となります。そこで、もっと手軽に取り組める予算管理方法があるのでここでご紹介します。

この予算管理方法は、科目ではなく主に支払先ごとに管理します。まず、毎月の売上と経費はこれまで通り事前に作成します。ただし、経費は支払先ごとの予算化です。例えば、デイサービスでお弁当を仕入れていたら、〇〇弁当店 100,000円となります。消耗品だったら、〇スクル 50,000円などです。いつも使っている業者に対して支払う見込み額が予算となります。

一方で実績入力ですが、売上は月初に請求したものを前月分として入力します。経費は業者から前月分の請求書が届いたら都度入力します。経費は請求書を見ながら金額を入力するので難しいことはありません。そのほか現金や口座振替で支払ったものもその都度、支払先ごとに入力しておきます。細かいものはその他としておいてかまいません。この方法だと翌月10日ごろには予算と実績の比較できます。

この予算管理表のねらいは、予算管理を身近にすることです。会計事務所から予算と実績の対比表をもらって先月はどうだったのか・・・という受け身ではなく、経営者や管理者が「この業者への支払いは〇〇円以内」と決めた金額以内に支出に抑えようと考えて、普段から積極的に行動することで、結果として支出額が予算内におさまるようになります。

人件費の予算オーバーは細分化して原因を考える

また介護サービスは人件費比率の割合が高いので、人件費についてもこの方法は有効です。正社員、パート、アルバイトなど毎月の人件費を細分化して予算化します。細かくなるとその中でのやりくりはかなり大変です。「人件費」という大きなくくりで経営をしていると、正社員が過多なのか、パートが過多なのか、残業代が過多なのかその原因がわからいまま究明せずに流してしまうことがあります。細分化された予算内でやっていけるようにと考えると、おのずと適正な人員配置から考え直さないといけなくなります。

下記に参考となる支払先ごとの予算と実績比較表を掲載します。予算から実績を引き算することで、予算超過の場合は赤字でその差額が表示されます。この赤字の差額がなくなるように経営をしていくと、結果として予算作成時に見込んでいた利益に近い着地が可能となります。

毎月の予算では、利益は必ず黒字となるように組みます。賞与がある場合はインパクトが大きいので、毎月引き当てて、賞与支払月に引き当て分を戻しいれるという予算を組んでおけば平準化できます。馬鹿にならない採用費や派遣スタッフ代などは予算を決めて取り組むことで、だらだらと経費を垂れ流さないようになります。

簡易予算管理表のExcel参考書式のダウンロード

さいごに

介護報酬の見通しに予期しないブレが生じる可能性があるのであれば、手許でコントロールできる経費の支出についてブレを極力なくして体力を温存しておくことが今年の戦略ではないかと思っています。将来、チャンスは到来します。その時に備えて今は手堅い経営に取り組んでみてはいかがでしょうか。

著者紹介

税理士藤尾智之先生藤尾智之(ふじお ともゆき)氏
税理士・介護福祉経営士
1996年、法政大学経済学部卒業
2000年、社会福祉法人に入職後、特別養護老人ホームの事務長として従事する。
2011年に税理士試験に合格し、大手税理士法人を経て藤尾真理子税理士事務所に入所。介護、障害を中心とした社会福祉事業に特化した経営サポートを展開する一方、社会福祉法人の理事や監事、相談役を務める。
著書に「税理士のための介護事業所の会計・税務・経営サポート」(第一法規)がある。
さすがや税理士法人URL: https://fujio-atf.jp/

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